温泉大国日本には、なんと3000か所以上もの温泉があります。温泉は、含まれている化学成分や、温度、液性(pH)、色、匂い、味、肌触りなど様々な特徴があります。温泉の泉質や効能を知っていると、肌触りや好みがわかったり、目的に応じた温泉選びができて温泉に行く楽しみが増えますね。
温泉は、源泉温度や含まれている化学成分、水素イオン濃度などによって様々な種類に分けられます。その中でも、一定の成分を含み、特に療養に役立つ泉質を持つ温泉が「療養泉」です。「療養泉」は鉱泉分析法指針に基づき、主成分によって現在では10種類の泉質に分類されます。
温泉の泉質などをご紹介します。
単純温泉
低刺激でお肌に優しく、神経を和らげてくれる「単純温泉」
「単純温泉」は日本の温泉の中で、最も多い泉質です。成分が単純というわけではありません。肌触りが柔らかく、癖がなく肌への刺激が少ないのが特徴で、子供からお年寄り、肌の弱い方も安心して入浴できる優しい温泉です。また単純温泉は不眠症やうつ状態などの改善に効果があるといわれ、日々の疲れで尖った神経をやさしく和らげてくれます。温泉地や温泉分析表に表示されている中に「pH値」というのが書いていると思います。これは、水溶液中に含まれた“水素イオン”の濃度を示す指数です。水素イオンはpH値の数値によって主に「酸性・中性・アルカリ性」と分類され、その数値によってお肌や体内への作用が変化します。PH8.5以上含まれるアルカリ性単純温泉は入浴すると肌がつるつるし滑らかになる特徴があり、美肌の湯と呼ばれています。
私たちイージス観光がお運びする天然温泉もこのアルカリ性単純温泉になります。
泉質別適応症:自律神経不安定症、不眠症、うつ状態
塩化物泉
お肌しっとり、保温効果で血行促進
日本では単純温泉に次いで多い泉質が「塩化物泉」になります。塩分が主成分のため、味は塩辛く、色は無色透明、肌あたりは海水のようなベタツキ感があります。入浴することで皮膚に塩の成分が付着し汗の蒸発を防ぐので、保温効果があり湯冷めしにくいのが特徴です。高い殺菌作用から切り傷や火傷への効能により「傷の湯」と呼ばれたり、酸性のお湯に浸かって角質をキレイに落としてから、この塩化物泉に入ると、ツルツルなうえにしっとりとした肌が手に入るので、「美人の仕上げの湯」という名称でも有名です。海に近い温泉はナトリウム塩化物泉であることが多いです。
泉質別適応症:切り傷、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症
炭酸水素塩泉
湯上りの爽快感!炭酸水素塩泉は美人の湯
「炭酸水素塩泉」は炭酸水素を多く含む泉質で、そのほとんどがアルカリ性の性質を持つのが特徴です。お湯に含まれている炭酸水素以外の成分によって、ナトリウム炭酸水素塩泉・カルシウム炭酸水素塩泉・マグネシウム炭酸水素塩泉などに分類されています。
アルカリ性の温泉には、化学反応によって肌の角質や毛穴の汚れを乳化して洗い流すクレンジング効果があり、皮膚を滑らかにします。肌の余分な脂を取りのぞき、新陳代謝も促してくれる効果によって、「炭酸水素塩泉」は「美人の湯」と呼ばれています。女性が喜ぶ泉質の代表格です。皮脂をキレイに落とすと皮膚表面の水分がさっぱり蒸発し、湯上がりには心地よい清涼感と爽快感を得られます。一方で、水分が蒸発しやすく入浴後には肌が乾燥することがあるので、保湿ケアをしっかり行いましょう。
泉質別適応症:切り傷、末梢循環障害、冷え性、皮膚乾燥症
硫酸塩泉
健康を助けてくれる長寿の湯
お湯の中に硫酸を多く含んでいる泉質を「硫酸塩泉」と呼びます。硫酸には血管を広げる働きがあり、高血圧症や動脈硬化が緩和されることにより脳卒中のリスクを下げてくれます。鎮静効果や肌の蘇生を助ける働きや通風などの痛みを和らげる効果もあると言われ、長く通うことで健康に作用することから「長寿の湯」とも呼ばれています。
泉質別適応症:切り傷、末梢循環障害、冷え性、皮膚乾燥症、抹消循環障害、うつ症状
二酸化炭素泉
シュワシュワと炭酸水につかっているみたい
炭酸飲料みたいにシュワシュワと遊離炭酸を多く含んでいる泉質は「二酸化炭素泉」です。体全体に気泡がつき、血液の循環をよくしてくれます。お湯の温度が高いと温泉の中に溶けている炭酸が気化して抜けやすくなります。そのため多くの場合、低温であることがこの泉質の特徴です。また、炭酸ガスは時間の経過によっても自然と抜けていってしまうため、お湯の鮮度が大切な泉質でもあります。低温なため体が冷えてしまうと思いそうですが、体全体に気泡がつき血液の循環をよくし血行促進作用によってしっかりと温めてくれます。また、低温であるということで血圧が上がりにくく、心臓への負担も軽くてすむので「心臓の湯」とも呼ばれています。
泉質別適応症:切り傷、末梢循環障害、 冷え性、自律神経不安定症
含鉄泉
入るとポカポカと体が芯から温まる
お湯の中に総鉄が多く含まれている茶褐色に近い含鉄泉。湧き出たときは無色透明ですが、温泉の鉄分が空気に触れることで赤色や黄色、赤茶色になります。温泉によっては鉄の錆びたような匂いがあるのも特徴です。なんといっても含鉄泉は高い保温効果があり、体が温まることが魅力の温泉です。その高い保温効果から更年期障害やリウマチにも効くことや、飲むことで貧血の改善にも効果があるといわれています。
泉質別適応症:鉄欠乏性貧血(飲用による適応症)
酸性泉
刺激が強め!殺菌効果が高い皮膚病の湯
「酸性泉」は水素を多く含む泉質で、pHが低い酸性のお湯です。中でも、pHが2〜4のものは「酸性泉」、pHが2以下のものは「強酸性泉」と呼ばれ他の泉質に比べると刺激が強く肌にピリピリとした感覚を伴います。酸性泉には強い殺菌作用があり、ニキビ・水虫・皮膚の疾患・切り傷といった、菌が原因となっている症状に効能があるといわれています。また、酸は古い角質を落としやすいので、新陳代謝を高める効果があります。しかし刺激が強いので肌が敏感な方や高齢者、小さなお子様は強い「酸性泉」への入浴を避けた方がいいかもしれません。
泉質別適応症:アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、耐糖能異常(糖尿病)、表皮化膿症
放射能泉
放射能泉は免疫力が高まる万病の湯
放射能と聞くと怖いイメージがありますが「放射能泉」はラドンを含む温泉で、微量の放射線が体にいい働きを与えることにより免疫力と抗酸化作用が高まる「ホルミシス効果」から、「万病の湯」と呼ばれています。湯あたりを起こしやすいともいわれますが、痛風が適応症に入る数が少ない貴重な温泉です。
ただ入浴するだけでも温泉は気持ちがいいですが、泉質ごとの特徴を知ることで、より効能を感じることができるので温泉入浴の楽しみが増えますね。目的や気分に合った温泉を選んだり、たくさんの泉質を巡ったりと温泉を存分に楽しんでください。